(一社)大阪府歯科技工士会主催「歯科チームにおける感染対策セミナー」レポート<第1回>

 1月31日、大阪府赤十字血液センターにおいて、(一社)大阪府歯科技工士会主催の「歯科チームにおける感染対策セミナー」が開催されました。感染対策ポスター

当日は晴天に恵まれ、会場は多くの受講者で賑わいを見せていました。
歯科技工士会主催のセミナーとしては珍しく、職種を問わず無料で参加可能ということもあって、多くの歯科技工士に交じって歯科衛生士の参加者も見られました。
参加者の年代、職種、性別は様々であり、いろいろな立場の方の関心が高いことが伺えました。

演者は前田憲昭先生と、大西正和先生のお二人です。
両先生とも、歯科医師と歯科技工士という、立場は違えども同じ歯科医療従事者という視点から、歯科の感染症リスクとその予防対策に長年取り組んでこられた先生たちです。

今回は、前田憲昭先生による「『ゾーンの考えで感染対策の再考』チームワークでの取り組みの提言」と題されたご講話の様子をお伝えします。

前田先生は、歯科の臨床現場を、診療(患者)ゾーンと技工ゾーンという2つのゾーンに分けて考え、そのゾーン間で搬送される物の持ち出しについて言及されておられました。

ゾーンの考え方では、それぞれのゾーンには異なった色が付いていると仮定します。それは人間一人一人も同じです。
ゾーンの外に色を持ち出したり、侵入させたりしてしまえば、必ず衝突が起きてしまいます。

写真左:前田憲昭先生、写真右:大西正和先生

写真左:前田憲昭先生、写真右:大西正和先生

他者のゾーンに元々無いものを持ち込むには、何かをして無色透明なものにしてからでなければなりません。その「何か」が消毒や滅菌なのです。

歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士、そして患者というゾーンが存在する以上、その管理を誰か一人に一任するのには限界があります。
また、感染症やウイルスは目に見えないため、複数の目で見えないところを見張って管理する必要があります。
前田先生は「チームワークでゾーンの管理に取り組まなければならない」と訴えておられました。

診療ゾーンでは、歯科医師がそのゾーンから出て行くものに対して管理する必要があります。
技工ゾーンから出て行くものに対しては、歯科技工士が管理する必要があります。
異なるゾーンに所属するメンバー同士が、お互いにどのような処理をして物を運び込もうとしているかを、コミュニケーションを通して知ることで、適切な感染症対策を実践することができるのです。

セミナーに参加された多くの人にとって、消毒や滅菌の必要性を考える上で、ゾーンという考え方は斬新に感じられたのではないでしょうか。

前田先生のご講話の中で印象に残ったのは、「歯科技工物は人工臓器である。それを作る歯科技工士は、『口腔機能支援師』と名前にするべきだろう」というお言葉です。
私たち歯科技工士は、歯科治療の現場に立ち会う機会も少ないため、医療人であることを意識しにくい環境にあります。
しかし、私たちは単に物作りをしているのではなく、患者の口腔内で機能する臓器を作っているのです。
それを意識することで、歯科技工士も歯科スタッフの一員であることを自覚し、チームとして感染症対策を考えることができるのではと思います。

 

 次回は、大西正和先生による「『歯科技工士の感染対策、これだけはせなあきまへん!』患者さん、歯科チーム、そして自分自身のために」のご講話の様子をお伝えします。